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青春の輝きを感じる造り手!ラツィオ州プリヴェルノのスリーピースワイナリーSETE初上陸!

2019年もトレジャーに新たな造り手が加わります!ラツィオ州の小さな町プリヴェルノから若い3人で活動するワイナリー"SETE"です。今回ブログちょっと文章が多く長いです。紹介というよりは彼らのワインが好きになった、すごく気になる!という方になるべくたくさんの情報を提供したいと思いバランスあまり考えずに書きまくりました。ご了承ください。基本今年4月に訪問した時の話と写真で書いていきます。

右からエミリアーノ、アルカンジェロ、マルティーナ

笑顔の写真から溢れ出る仲の良さ、リーダー格のエミリアーノはボルセナのレコステで3年間働いていた経験を持ちます。レコステを離れたあとに地元プリヴェルノに戻り、アルカンジェロとマルティーナとパブで出会います。パブってとこがとても良い感じ。エミリアーノからナチュラルなワインを教わった2人は彼と共にプリヴェルノでワイナリーを結成する事になります。こういうめっちゃバンドっぽいストーリー大好物。

畑に生息するセーテ犬のフェデリカ。実質4人目のメンバーです。足が短くて可愛い…

エミリアーノはプリヴェルノから2005年にローマに移住。ローマ大学でコミュニケーション科学、企業コミュニケーション・マーケティング学部を卒業。その後ローマ大学院に進みました。専攻した分野に関してはイタリア語から訳すのが非常に難しいテーマでしたがトレジャー葵が一生懸命訳してくれました。おそらく人と人の繋がり、組織を形成した中においても個々の魅力をクローズアップし、それによってビジネスへの人類学的なアプローチを行う、というような内容。ちょっとわかりづらいな…これは自分の言葉不足です。とにかくかなり興味深いエミリアーノの学歴は今のセーテが誕生したことに非常に大きく関わっていると感じました。まさに今彼が中心になり、プリヴェルノで人々の新たな活動を先導しているからです。 大学院を出てから観光やエノガストロノミー(ワインを意味する「エノ(Eno)」と、美食学・料理法などを意味する「ガストロノミー(Gastronomy)」とを組み合わせた造語で上質な食文化を楽しめる場所という意味。)の仕事に関わり、その後ビオロジック分野の仕事でも働きました。2010年~2012年まではボルセナ湖のレコステで働き、その影響でSo2を加えない自然なワインに魅了されました。その後レコステを離れ自身の故郷プリヴェルノに数年ぶりに帰郷します。エミリアーノは自身のこれからの生き方を見つめ直します。そんな中、町のビアパブでアルカンジェロとマルティーナと出会い、彼の新たなストーリーが始まるのです。

ラティーナ県にあるプリヴェルノはちょうどローマとナポリの中間に位置するやや内陸側のエリア。周囲を山に囲まれ、その先には海があり風に運ばれた砂が大きく影響した土壌です。ワイン産地としては非常に小規模。葡萄よりも野菜や果物、オリーブ、そして土に多量に含まれるケイ素を原料としたガラス製造&採掘が盛んな町でした。30年ほど前からイタリアも大きく変わっていき、地元の人々は事務仕事が主になり、多くの若者は仕事を探しに町を出て行くようになったそうです。そういった経緯でこの町の畑は手入れされずに残されていました。しかしそれがある意味セーテ達のワイン造りに良い状況を生み出しました。それは多くの畑が企業的なワイン造りの介入を免れ、農薬散布や土をいじったりなどはなく、樹齢も高い樹がごろごろと残ったのです。エミリアーノ達はこれに活路を見出し、町の畑の所有者(主に高齢な方々)に協力を仰ぎ、プリヴェルノでナチュラルなワインを造りを通じて土地の自然と人々を再生させる、農業・社会・文化的なプロジェクトとして動き出すのです。2013年から活動を開始、畑レンタルの交渉や、準備に4年間費やし、2017年に醸造したワインから販売を開始しました。このとき最初の顧客取得に一役かってでてくれたのがレコステのジャン・マルコ。彼主催のイタリアでのサロンに呼ばれ、試飲した関係者から大きな反響を得ました。ちなみにこのサロンの参加者はジャン・マルコらしくほとんどがフランスの生産者。イタリアで参加した生産者はセーテとカンパニアのカンリーベロだけだったそうです。ジャン・マルコからはワイナリーを始める時に「お前がワインを自分で造る?そんなん怖くて考えたくないわ!!」と言われたそうですが、その後、「大切なのはワインに何も加えない事だよ。」とエールを送ってもらえたそう。僕のイメージでは破天荒なジャン・マルコですが意外に面倒見よいのかな?と思った良いエピソードでした。エミリアーノは彼をとても慕っており、ワインにもかすかにレコステのDNAを感じる時があります。ワインを初めて販売する時にジャン・マルコやラミディアに相談して、助けもあり、ネットの力もあり運よくワインが流通していった、と感謝していました。

赤土を多く含む土を見せてもらいました。色でわかりますね。この中にガラス加工の原料のケイ素がたくさん詰まっています。少し湿ったような柔らかさがあり、香りが深い。これにより根が地中深くに届き、フィロキセラの害を免れた樹もすこし存在します。非常にポジティブな土壌をしていると感じましたが、彼らの畑には一つ厳しい条件がありました。それは春~夏にかけての基本的な雨量の多さ、湿度の高さ、9月以降はさらに雨が多くなるので収穫は基本的には8月中に行わなくてはいけません。こういった環境で育つ葡萄は糖度が余り上がらない、アルコール度数の低い"軽いワイン"になってしまうのです。しかしエミリアーノはプリヴェルノをこう表現しました。「偉大なワインは生み出せないエリアかもしれない」ですが、「ここで仕事を始められた事は逆に幸運だった」と言いました。自分達が好きなワインが優しく軽く美味しくあるワインだからです。地域のテロワールに逆らう事無く"軽い"というワイン造りに集中することにしたのです。しっかりしたワインも造れなくはない、でも土地の特性を割り切って貫いたスタイルの結果、彼らのワインは確かに軽やかですが、マセラシオンによる果皮のアロマティックさと優しい旨味を備えた、飲み手にワインで喉を潤す喜びを与えるまさにワイナリー名に繋がるような極上の飲み心地を実現させています。

最初のフリッツァンテを注いでくれるアルカンジェロ。このワインは売り切れで未輸入です。

畑からプリヴェルノの町に移動して昼食をとりながら彼らのワインを試飲しました。この食事したレストランが超個性的、エミリアーノ達は畑仕事の休憩でお昼に良く食べに行くらしく、レストランというより「食堂」という感じです。名前は"la Societa Operaia e Artigiana"という食堂。1882年に設立され、職人、農民、労働者などが運営していました。近くに大聖堂や役所があるので、日本でいうと"区役所の食堂"的な感じ。しばらくは運営がストップしていましたが、10年程前からAgnezeさんとMaurizioさんというおばちゃん&おじちゃんコンビが再開させました。プリヴェルノのスローフードの活動もしている彼女たちはプリヴェルノの地野菜やオリーブなどをふんだんに使用した家庭的な料理を提供してくれます。

全てがプリヴェルノで造られし食材。水牛サラミ、リコッタディブッファラ、ブロッコレット・キアッケデッリ(キャベツとブロッコリーの交配)という地域の野菜オイルマリネなどのミスト。ここのエリアのオリーブオイル(イトラーナ種)がとても美味しい。セーテもいずれオイルを生産したいらしいです。楽しみです。

地場の水牛とスペックのラグー・フェットチーネ。重くない。軽い。身体が受け入れられるコク

牛のラグー、ジャガイモと共に…とにかく重くない

あれ?見た目あんまし…と思ったそこのあなた!気持ちわかります笑

でも本当にほっとする味…旅の終盤で疲れた胃にも優しい美味しさ。セーテのワインの身体への入りやすさと合わさって最高に楽しい食事になりました。ここはぜひ色々な方に訪れてほしいセーテファンの聖地になってほしい。ちなみにお店に訪れた人たちが一言書いていくノートがありましたのでそれに何か書きました。訪問される方は見て、そして書いてください。

それでは彼らのワインを紹介。全てのワインにちゃんとテーマがあります。

最初のワインはこのインパクト抜群なエチケットも魅力の"トロピカーレ"。

オットネーゼ主体、トレッビアーノ&モスカート少量ブレンド。

このワインは彼らの土地に対する、彼らの現在の解釈を表現しています。ここ10年のこのエリアでは、春と夏の間の気候が湿気を帯びた暑さに特徴づけられます。このワインも南国を連想させるアロマを持つ事から、この名前とエチケットになったそうです。国が決めた原産地呼称では絶対採用されないワインですが、実はこの地域の今の特性を一番表現している原産地ワインかもしれません。でもトロピカーレにIGTが付いたら笑っちゃうよね(笑)、とアルカンジェロ。

2つ目は"インフラスカート"というワイン。意味はスラングで色々な物を混ぜ合わせたという意味。オットネーゼ60%とモスカート40%。

セーテが最初に造ったワイン。自転車のエチケット。この自転車はエコロジー、環境、持続可能性、そしてワインの飲みやすさが"下り坂にあること"を象徴的に表現しています。マセラシオンはオットネーゼ2日間、モスカート7日間。トロピカーレよりもやや厚みがあり、セーテの中ではALCの高い11.5%。もちろん香りはトロピカルで中毒性抜群。

3本目"フローラ"植物という意味があり、名前通り女の子のワインだとエミリアーノ。

モスカート・ディ・テッラチ―ナ100%。

華やかな香りが最初から炸裂するワイン。ハーブのニュアンスも強く名前の由来になっています。ALCは9.5%。軽っ!!エチケットのデザインは1800年代のデザイナーであるウィリアム・モリスのデスクトップ背景から取ったそうです。

4つ目は"サッビア"このワインだけ畑で乾杯して飲んだため写真撮り忘れたので事務所撮りです。オットネーゼ主体、マルヴァジア・プンティナータ(マルヴァジア・デル・ラツィオ)今回一番入荷本数が少なかったワインでこのブログを書き切る前に完売してしまいました…

僕が初めて飲んだセーテのワインもこのワインの2017年。とにかくグァバジュースやパッションフルーツのようなアロマが鮮烈で強靭な酸味とミネラルと雑味(旨味)に驚いたワインでした。今回2018年VTでしたが、正直2017年より若干パワーダウンした雰囲気でした。それでも抜栓後の味の変化など今回入荷の白ワインのなかで一番輝いていたワイン。今から来年のリリースが待ち遠しいです。エチケットはこのワインを造る葡萄を栽培している場所Contrada San Martino(中世から残る集落)の様子を描いています。他の畑とは違う特徴を持った地域で、黄砂とシリカが豊富な赤砂による砂質土壌。この砂は風によって運ばれてきたもので、San Martinoの丘が何千年も前にCirceo国立公園(ラティーナ県の西部海岸付近、1934年に設立)の沿岸から風で運ばれてきた土壌です。地中深くに根を伸ばす樹齢の高い樹の葡萄を使用しています。現状彼らの代表ワインだと認識しています。

最後のワインが"フリーキー"普通じゃない!という名前のワイン。

品種はオットネーゼ主体、サンジョヴェーゼ、モスカート。なんと白ブドウが主体のロゼ笑

全ての葡萄を混醸、マセラシオン7日間。モスカートのアロマティックな香りが溶け込んだ野イチゴ爆弾系な味わい。正直一番好みのワインでした。食事をめっちゃ呼び込むワイン。

このワインのアイデアは2014年、とても雨が多かった年に生まれました。あるおじいちゃんの畑でオットネーゼ、モスカート、サンジョヴェーゼを栽培していました。過度の雨と、活動間もない彼らの経験不足により、うどん粉病の被害が強くなってしまい、収穫量はとても少なくなってしまったそうです。その量は白ワインと赤ワインを一つずつ造ることすらできず、彼等は白ブドウと黒ブドウ全てを一緒に醸造することにしたのです。結果、偶然ですがめちゃくちゃ美味しいロザートが誕生したのです笑

以降、VTの気候や収穫量によって3種類かそれ以上の品種を混ぜて毎年気ままに醸造しています。個人的にストーリー、味わい共に大好物なワイン。

番外編。このワインが最初アルカンジェロが注いでいたフリッツァンテです。ワイン名は無く、しいて言うならばエチケットの絵通りに"ボンバ"

このワインも偶然から生まれたワイン。残糖を気にせずにボトリングしてしまったワインが、耐ガス用ボトルではなかった為に次々と再発酵を起こした時に破裂してしまい、まるで爆弾のようだった、という事から笑。ちなみにめちゃくちゃ美味しい。土壌はエミリア南部(トレジャーで言うとクアルティチェッロのエリア)に少しにた環境。フリッツァンテとは相性抜群。このワインがあればビール好きな僕でも乾杯はワインで始められます。セーテには今後フリッツァンテを偶然ではなく造ってもらいたいな、と願っています。

食堂から車で5分くらい。町中に彼らのカンティーナがあります。超ピッコロ。

この写真はネットから彼らのFBから拝借。トルッキオを使用して葡萄を圧搾しています。

狭いスペースの中にギュッとグラスファイバータンクが並んでいます。このエリアは土壌の特性からガラス加工などが盛ん。そういった意味でもこの容器はテロワールに合わせて有るのかも。それともレコステの影響か。今度聞きます。ちなみに栗の木樽が少しだけあります。

ここでもリリース待ちのワインをいくつか飲ませてもらいました!今回入荷したワインよりも熟成が長い、ということは上級ワイン的なワイン達です!そう、セーテまだまだワイン種類あるんです!買うの大変だな…汗)飲んだワインは、

・エステレーモ(キレキレの意)。足踏みで醸造したモスカート。珍しくノンマセラシオン。実験的なワインですが、かなり個性出ててこれも好き。ちょっとだけ他より安いと助かるんだけどな笑

・マーヤ。こちらもモスカート100%。マセラシオンは1週間。ALC12.5%くらい。このワインの飲んだ時の自分「超美味しい!」とボイレコ内で叫んでました。今回の訪問時にテイスティングした中で一番すごいワインだったと記憶しています。アルカンジェロはこのワインを「スパッカ」爆発した時みたいなインパクト、と評していました。納得。超欲しい。ちなみに来年入荷予定です!

最後に一緒に取った写真。6本くらい飲んだからちょっと良い気分になってました笑)

今回もコンビを組んで通訳で最大限のサポートをしてくれた明菜ちゃん。ツアー最後の仕事を終えてやりきった渾身の笑顔です。いつも本当にありがとう。

今回の訪問で最も印象に残ったエミリアーノの言葉

「色々な人生の選択がある。この町を出ていく若い人もいるけど、僕たちはこの町に残りやっていくと決めたから。それを貫きたい。」

彼等からは成長しなくてはいけない!やりきらなくてはいけない!という必死さがビシビシ伝わってきました。でもすごく楽しそう。バンドみたい。みんな自分達のワインと町を愛している。青春を感じる。それがワインに出ている。若さと軽さが中心だけどだからこその魅力を放っている。ワインにそれが写し出されている。解散しないでね汗)

めちゃくちゃ長文、完全自己満な感じになってしまいましたがたくさん情報は詰め込めたと思います!最後のここまで読んで頂いた皆様本当にありがとうございます。

そしてセーテをこれから宜しくお願いします!

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