カンパニア古来品種の鮮烈な個性!自然の楽園の守護神"シルヴァ・プランタリウム"新ワイナリー紹介第二弾!!
2018年新着ワイナリーのご紹介第二弾はカンパニアのオールドルーキーシルヴァ・プランタリウムです!カンパニア州サレルノ県トッレ・オルサイアにワイナリーと畑を構える生産者です。サレルノと言ってもサレルノ中心からは非常に離れており、バジリカータ州との境に位置するようなまさにカンパニアの最深部。
今回のイタリア出張前からリサーチしていたのですが、全くテイスティングをしたことのない未知の生産者でしたし、このトッレ・オルサイアの位置を地図で見た時にすごい場所にあるんだな…と不安になりました。
すでに取り組んでいるジョヴァンニやカンリ―ベロを訪問してからサレルノ駅から電車で3時間近くかけて美しい海岸のある"サプリ"という駅の街から山を車で30分ほど登ると彼らのカンティーナに到着。サプリは海があり、時期によってはイタリア人観光客もたくさん来る賑やかさがありましたが、トッレ・オルサイアは山、森、自然!という全く印象の異なる場所でした。
シルヴァ・プランタリウムの畑。付近の山が見渡せる雄大な自然の景色
元々は植物の苗木を栽培して販売する農園として運営されていました。
とにかく鮮明な緑が美しい場所で、最初に思った感想は「まるで自然の楽園や!」でした。
カンティーナで出迎えてくれたのは当主のマリオ・ドンナベッラ。年齢は70歳を超えていて話し方や振る舞いなど落ち着いた魅力を感じました。
彼は若い時からこの場所で先祖から受け継いだこの農園で自然と共に働いていましたが、ワイン醸造は2014年から開始したまさにオールドルーキーです。
ルーキーとは言え付近の自然への知識や接し方はまさに大ベテラン!説得力のある説明を聞きながらまずは畑を見て回ることに。
ルドルフ・シュタイナーや福岡正信氏の影響を受けたマリオは自然と徹底的に向き合っています。土の上には様々な花やハーブが生えています。畑の土質に関して質問してみましたが、返答するのを少しためらいながら「砂質に粘土が混ざっているが問題は土自体の質では無い。その上にある生命がどう生きていているかだ」マリオは言いました。「どういった植物や微生物が存在するのか、それらの状態はどうなのか、元気に生命が育まれているのか。そこまで考えなくては土壌の特性を理解したとは言えないんだよ」と。畑を歩いている間もマリオは色々な植物の成長を気にかけ、昨年との違いを細かく話してくれます。
彼らの畑は僕にはとても生き生きとしているように見えました。素晴らしい畑と彼の経験から生まれる話しの面白さに引き込まれ、まだワインを飲んでいないにも関わらず、期待は膨らむばかりでした。
醸造所へ移動してついにテイスティングの時間!シルヴァ・プランタリウムではたった2種のワインしか醸造されていません。生産本数も非常に少ないです。そして写真の通り熟成にはアンフォラを一部用いています。
トップにも載せていたこのワインが"カマラトン"という白ワインです。ローマ神話に登場する「出産と予言の女神」の名前だそうです。なんか凄く壮大だし縁起が良さそうな名前…
品種はサンタソフィアとフィアーノ50%づつブレンド。トノーで熟成をしています。サンタソフィアという品種を飲むのは初めてでした。この地で昔からさいている古来品種。カモミールや蜂蜜の香りがあり、アロマが強く、セミアロマ付き葡萄とされています。カマラトンはフィアーノを半分混ぜる事によりこのアロマに加えて芯のある味わいになっています。
約10日間のマセラシオンを行っており、果皮のアロマと味わいの充実感が素晴らしく表現されています。亜硫酸無添加、ネガティブな要素は一切なく、本当にハイレベルな味わいでした。テイスティングしてすぐに「旨い!」と感じました。このリアクションにはマリオも喜んでいました。マセラシオンをしているのに皮が主張しすぎず、どこかデリケートな優しさを感じます。今までにない質感。まさかカンパニアの奥地にこんな隠れワインが存在するとは…本当にイタリアは面白い!
こちらが赤ワインの"ブシェント"。非常に濃い外観で飲む前に少し緊張…重そう…
こちらの品種はアリアニコーネ90%とアリアニコ10%。アリアニコーネ…アリアニコと違うの??と思われる方もいるかと思いますが、別の品種です。アリアニコの原種と言われており、数年前に特定されたこのエリアの品種。アリアニコと比べて房が大きく広がり、粒が大きく、種のタンニンが少ないのが特徴。そしてアリアニコよりも早熟で熟すのに時間がかかるアリアニコよりもこの地域の気候には適しているそうです。
このワインの熟成はトノーとアンフォラを使用。香りのアタックはまるでクランベリー。そこにほのかなスパイス感。外見とは裏腹に以外に濃くないシンプルな香り!飲むと果実味もワイド感はあるけど重すぎない…絶妙な質感。美味しい…でもタンニンはなかなかに強力です。現段階では評価は割れそうですが、熟成進んだら凄いワインになるでしょう。このワインからはアリアニコーネを半端には造らない、というような覚悟のような充実感が伝わってきます。
最初一口飲んでタンニンにやられていた自分の顔をみて、義理の息子のアレッシオがマリオに「VTちゃんと教えた?彼ちゃんと解ってるの?」と少し不満そうでした汗)
アンフォラは地中には埋めていません。重要な事だと認識しているが、現状は困難みたいです。マリオにアンフォラを使用する理由を聞いてみると「土から生まれた葡萄を土に近い容器で熟成させていきたい事が最初の理由。そして葡萄に木の要素が加わらず、わずかな空気との接触もワインに好ましいことだと思っている。今後は白ワインもアンフォラだけで熟成していく予定だ」という返答でした。
これからどういう判断をしていくのか気になりはしますが、個人的にはアンフォラだから良くなる、悪くなるとかは心配の無い元々のベースが良いワインだと感じました。その年の天候、生産者の判断に多少の変化が起きて行くのは当然のこと。畑ではベテランとはいえワイン造りはまだまだ5年未満。これから色々な変化があるかも知れませんが、自然への尊敬、葡萄を大切に醸造するという基本概念は変わらない生産者でしょう。これからが楽しみでしょうがないです。
右が娘のルアーナ、左が旦那のアレッシオ。まだ30前の若い二人は父マリオの仕事をサポートしています。父の60歳を超えてからのワイン造りを共にチャレンジしています。南イタリアらしい結束の強い家族愛も本当に素敵でした。
カンパニアの新たな一面を感じられるシルヴァ・プランタリウムのワインを是非飲んでください。